- 第9回 -
再生可能エネルギーで日本再生を
風薫る5月。人々がウキウキする季節がやってきた。しかし、今年の日本の初夏は例年とは違う。東日本大震災が人々の心に大きな影を落としている。中でも福島第一原発の事故は、人々に一次エネルギーとしての原子力発電に大きな疑念を与えた。原子力発電は、これまでわずかな燃料で莫大なエネルギーを生成できることや使用済み燃料をリサイクルできることからコストが安価で、石炭火力発電などに比べてCO2排出量が格段に少ないことなどから温暖化対策の面でも優れているとされてきた。しかし、今回の事故を受けて、原子力発電の「安全神話」は崩れ、国民とりわけ地域住民の理解を得るためには、「想定外」のことまで想定してあらゆる対策を講じなければならなくなった。安全・安心の確保に莫大なコストがかかるのは必至である。また温暖化対策の面でも、燃料棒冷却のための温排水の放出による海水温度の上昇など、いくつかの問題点が指摘されている。今回の事故で原子力発電の優位性は完全に崩れてしまった。今後、原発を増やすことはかなり難しい。日本のエネルギー事情と温暖化対策の必要性を考えると、再生可能エネルギーを大幅に増やさざるを得ない。
今回の震災は大変不幸なことだが、再生可能エネルギーを普及させる絶好のチャンスと捉えたい。これまでの地域独占の電力会社から送電線を通じて需要者に電気が送られる集中型発電から、需要地近くに設置される小規模な発電設備で発電し、ネットワークを通じて地域で電力を融通し合う分散型発電に変えていくことが、安全と温暖化対策の両立を図る手段の一つとなる。その典型が屋根に設置される太陽光発電や小型風力発電である。これらは不具合が生じても発電しなくなるだけで、発熱はないし、有害物質も放出されない。
リスクの分散にもなる。地域特性に応じてこの分散型電力ネットワークに小型水力発電、洋上風力発電、バイオマス発電などを加えてもよい。いずれも天候等に左右される不安定電源なので、蓄電池を装備し、ITを活用して電力需要をリアルタイムに把握・制御するしくみが必要となる。また既存の送配電系統に分散型電力ネットワークが組み込まれなければならない。様々な課題を乗り越え、地域特性に合わせてエネルギーの地産地消を進めることは、地域経済の発展にもつながる。
大手企業や研究機関はもとより、中小企業も再生可能エネルギーの実現に乗り出している。東京都に本社のあるゼファー株式会社は、一般家庭にも取り付けられる小型風力発電装置を製造している。フクロウの翼をヒントに風を切る音を消去し、コイの尾びれをヒントに風向きに応じて自在に向きを移動し変換効率を高めている。茨城県水戸市に本社のある株式会社小松崎都市開発は、2010年6月に、茨城県鹿島港の海上に日本初の洋上風力発電所を稼働させた。2MW、7基の風力発電装置は5mの津波に耐え、平常運転を続けている。現在は東電からの依頼を受け、24時間フル稼働中である。新たに隣に8基、更にその沖合に80〜100基の建設が予定されている。大阪府堺市に本社のある株式会社山崎は、搬送装置の製造などで培った技術を利用し、農業用水路などの落差のない既存水路を利用する流水式マイクロ水力発電装置を開発した。このように多くの企業や研究機関によって、様々な再生可能エネルギーが進化を続けている。
まずは被災地の避難先の学校や公民館に太陽光発電を設置することから始め、復興の街づくりに再生可能エネルギーを核としたスマートコミュニティを建設してはどうだろうか。ピンチはチャンスである。再生可能エネルギーは、必ずや日本再生の起爆剤になるに違いない。
高野 淨(たかの きよし)
27年間、電気メーカーの情報システム部門に勤務。技術、生産、販売、環境分野の経営改革推進や情報システム構築を経験。経営コンサルタントとして開業後は、持続可能な社会の実現に貢献することを経営理念として、製造業の事業戦略立案、業務プロセス改革、環境経営の推進、IT活用などの支援を中心にコンサルティングやセミナー講師等を行っている。中小企業診断士、ITコーディネータ、環境プランナーER。
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